【理科教育法】学習指導要領の変遷 序 学習指導要領とは

教員研修会の資料をブログに載せているので、大学で教えている理科教育法の資料もブログに載せておこうと思います。
今まで学習指導要領の変遷については、ごく簡単にまとめたものを印刷して配布していたのですが、より詳細なものをブログにまとめ、必要に応じて参照できるようにしておきたいと思います。適宜追加補訂することがあります。



【理科教育法】学習指導要領の変遷
目次 リンクで当該記事に飛びます。
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序 学習指導要領とは (本記事)
(1) 昭和22年試案
(2) 昭和26年試案
(3) 昭和33年改訂
(4) 昭和44年改訂
(5) 昭和52年改訂
(6) 平成元年改訂
(7) 平成10年改訂
(8) 平成15年一部改訂
(9) 平成20年改訂





序 学習指導要領とは
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 今回は「理科教育法」というよりは「教育法規」っぽい話ですが…。

学校教育法施行規則 (昭和二十二年五月二十三日文部省令第十一号)
第七十四条  中学校の教育課程については、この章に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する中学校学習指導要領によるものとする。


 各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めたもので、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や大まかな教育内容を定めています。各学校では、地域や学校の実態に応じるのはいいけれど、学習指導要領を踏まえて教育課程(カリキュラム)を編成しないといけません。学習指導要領には学校教育法施行規則に基づく法的拘束力があるのですね。各学校が学習指導要領を踏まえて教育課程(カリキュラム)を編成することによって、全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるのです。

学習指導要領の法的拘束力については、かつてはその有無が議論されていましたが、現在は最高裁が判決で認めています。有名どころが「旭川学力テスト事件」と「伝習館高校事件」です。

旭川学力テスト事件(昭和51年5月21日 最高裁判決 昭和43年(あ)第1614号)は、昭和36年10月26日に旭川市立永山中学校において実施予定だった全国中学校一斉学力調査を阻止するために、校長や教育委員会の職員等に暴行、脅迫を加えて、その公務の執行を妨害した事件です。
 原審(控訴審も原審を支持)では、校長らの実施しようとした学力調査は重大な違法なので、公務執行妨害罪にはならないとし、共同暴行罪のみを認めました。これに対し、上告審の判決では学力テストは適法であり、それゆえ公務執行妨害罪の成立を認める逆転判決を下しました。『教育内容を決定する権利』は国家・国民のどちらにあるのか?など興味深い論点は多いのですが、ここでは学習指導要領の法的拘束力を適法と解する部分を抜き出すのみとします。

これを前記学習指導要領についていえば、文部大臣は、学校教育法三八条、一〇六条による中学校の教科に関する事項を定める権限に基づき、普通教育に属する中学校における教育の内容及び方法につき、上述のような教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定することができるものと解すべきところ、本件当時の中学校学習指導要領の内容を通覧するのに、おおむね、中学校において地域差、学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準と考えても必ずしも不合理とはいえない事項が、その根幹をなしていると認められるのであり、その中には、ある程度細目にわたり、かつ、詳細に過ぎ、また、必ずしも法的拘束力をもつて地方公共団体を制約し、又は教師を強制するのに適切でなく、また、はたしてそのように制約し、ないしは強制する趣旨であるかどうか疑わしいものが幾分含まれているとしても、右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており、全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格をもつものと認められるし、また、その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていないのである。それ故、上記指導要領は、全体としてみた場合、教育政策上の当否はともかくとして、少なくとも法的見地からは、上記目的のために必要かつ合理的な基準の設定として是認することができるものと解するのが、相当である。



伝習館高校事件(平成2年1月18日 最高裁判決 昭和59年(行ツ)第45・46号)は福岡県立伝習館高校の3人の社会科の先生が、教科書を使用せず、学習指導要領から逸脱した偏向教育を行ったとして懲戒免職になった事件です。先生たちはその取り消しを求めて裁判を起こしました。

 「高等学校学習指導要領(昭和35年文部省告示第94号)は法規としての性質を有するとした原審の判断は,正当として是認することができ,右学習指導要領の性質をそのように解することが憲法23条,26条に違反するものでないことは,最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決の趣旨とするところである。」
 「これらの点からして,国が,教育の一定水準を維持しつつ,高等学校教育の目的達成に資するために,高等学校教育の内容及び方法について遵守すべき基準を定立する必要があり,特に法規によってそのような基準が定立されている事柄については教育の具体的内容及び方法につき高等学校の教師に認められるべき裁量にもおのずから制約が存するのである。」



 とはいえ、労働基準法があってもそれを無視したブラック企業があるように、学習指導要領が法的拘束力を持つといっても、それを守らない学校もありました。

 2006年ごろから発覚した高校の未履修問題です。大学受験に重きをおいている進学校にとって、受験に関係ない科目はお荷物扱いになっていることがあります。そこで必修科目にもかかわらず実際にはやらず、書類上だけでやったことにしていたのです。
私の知っている例では「世界史」の時間に「日本史」をやっていたケース。「日本は世界の一部だから日本史を世界史の時間にやっていいのだ」という素晴らしい論理を聞きました。
それから私立の男子校。それまでその学校では家庭科をまったくやってなかったのですが、さすがにそれはまずいとどこかから指導が入ったらしく、ある年から家庭科の先生を非常勤講師で雇って家庭科をやることになりました。で、家庭科といえば調理実習。やろうと思ったけどその学校には家庭科室というものがない。そこでやった部屋がなんと生物室。衛生面を恐れて誰もそのハンバーグを口にすることはなかった…なんて話を聞いたことがあります。

 ここまで派手な話はともかく、現行の中学校学習指導要領で、「地層の重なりと過去の様子」のところで「野外観察などを行い…」とあるのですが、地層の野外観察なんてぶっちゃけやってない学校の方が多いのではないかと。だから「野外観察を行い…」ではなく「野外観察などを行い…」と「など」をつけることで必ずしも野外観察を行わなくても…。おや、誰か来たようだ。

それはともかく、戦後の中学校理科の学習指導要領の変遷を次回から見ていきましょう。



Check It Out!

学習指導要領等の改訂の経過
中学校学習指導要領解説総則編の97ページ以降に
(資料)として掲載されています。文科省の立場から学習指導要領全体の各改訂の要点としてはこれを参照するとよくわかります。これを念頭に置いて中学校理科の学習指導要領はどう変わっていったかを見てみると理解しやすいでしょう。

学習指導要領をめぐる教育裁判
 「学制百二十年史」の一部。

学習指導要領データベース
国研(国立教育政策研究所)による学習指導要領データベース。戦後の学習指導要領の本文が読める。

野崎剛毅 「学習指導要領の歴史と教育意識」國學院短期大学紀要第23巻(2006)
 学習指導要領の変遷を深く知るならこれも読んでおきたい。社会的背景や受験との関係、学術的な議論など、文科省が書けないネタが満載。
 ちなみに、3ページ目からの 3 1947~:児童中心主義 からの数ページは、なぜか髙木和男「学習指導要領からみた音楽教育の変遷― 特に小学校における音楽教育その①」尚絅学院大学紀要第 56 集(2009)の2.教育環境と学習指導要領の変遷でも読めてしまいます。これって…(滝汗 ネットって怖い。。。

大杉昭英 新しい学習指導要領のねらい 季刊 政策・経営研究 2009 Vol.2 pp.59-74
 平成20年度の学習指導要領についての歴史的背景からの詳し~い解説。指導要領の変遷も述べられている。
 ちなみに「季刊 政策・経営研究」とは三菱UFJリサーチ&コンサルティングの研究機関誌。

教育課程の改善の方針、各教科等の目標、評価の観点等の変遷
国研こと国立教育政策研究所による教育課程の改善の方針,各教科等の目標,評価の観点等の変遷の詳しい資料
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