【理科教育法】学習指導要領の変遷 (7)平成10年改訂

小学校 学習指導要領 平成10年12月
中学校 学習指導要領 平成10年12月
高等学校 学習指導要領  平成11年3月

zest for living 「生きる力」、これが平成10年改訂版学習指導要領のキーワードです。

これは21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)(平成8年7月19日)の中で、次のように述べています。

このように考えるとき、我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。

さらに、「ゆとり」との関係は、

 我々は、[生きる力]をはぐくんでいくために、これらに共通のものとして、子供たちにも、学校にも、家庭や地域社会を含めた社会全体にも[ゆとり]が重要であると考える。…こうした社会全体の[ゆとり]の中で、子供たちに[生きる力]をはぐくんでいくことができるのである。

と、いずれも第1部(3)で述べています。

つまり、「生きる力」をはぐくむために、受験対応の知識詰め込みから、自ら学び,自ら考えることが重視されたり、 平成元年の「生活」科に続き、経験カリキュラム的な教育課程「総合的な学習の時間」(the Period for Integrated Studies)が登場したりするわけです。これは指導要領の「総則」にあるところから「教科」ではありません。もちろん、道徳でも特活でもありません。新しい何かです。

一方、もう一つ平成10年版学習指導要領が施行される平成14年から、学校完全週5日制が始まります(高校の指導要領施行は平成15年から)。そうすると、単純に授業時間が減りますから、学習内容も減らさなければなりません。そこで、基礎・基本を徹底するとばかりに、教育内容の精選と3割削減されます。ついでにクラブ活動も廃止されています。高校では卒業単位数が縮減されました。
「ゆとり」、此処に極まれり。


そういえば学校週5日制へ移行、つまり土曜日に学校が休みになるのは、土曜日は子供たちを家庭や地域に帰して、そこで子どもたちにさまざまな体験をさせることによって、健やかな成長を促そうという趣旨がありました。なので地域の受け皿、すなわち「子どもの居場所」づくりが当時から課題となり、私も学校としてでなくて博物館などで実験教室の講師などに駆り出されたものです。

この土日の使い方や総合的な学習の時間もそうですが、学校に「家庭や地域との連携」や「特色ある教育」が各学校に期待されることになります。高校では学校設定科目・学校設定教科が新設されました。

その他・・・

中学校・高等学校で外国語は必修になり、原則として英語をやります。
中学校:必修教科としての「外国語」においては,英語を履修させることを原則とする。
高等学校:外国語のうち「オーラル・コミュニケーションⅠ」及び「英語Ⅰ」のうちから1科目が必修(英語以外の外国語を履修する場合は,学校設定科目として設ける1科目とし,その単位数は2単位を下らないものとする。)

高等学校の科目選択の拡大
高等学校「情報科」の新設(情報のうち「情報A」,「情報B」及び「情報C」のうちから1科目必修)



小学校学習指導要領 第2章 第4節 理科
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小学校理科の特色を2つほどあげます。

1点目は「B物質とエネルギー」の指導に当たっては,各学年、2~3種類程度のものづくりを行うことです。
具体的には指導要領解説に次のように例示されていました。

3年
光の性質→平面鏡を使って物を温かくしたり明るくしたりする装置、太陽熱温水器
乾電池や豆電球→回路を切ったりつないだりできるスイッチ、電気を通す物であるかどうかを調べるテスター、灯台、信号機
磁石→極のはたらきや性質を使って動く自動車や船

4年
空気や水に力を加えたときの性質→空気でっぽう、水でっぽう
物の暖まり方→ソーラーバルーン
電気の働き→乾電池や光電池を用いた自動車やメリーゴーラウンド、発光素子や圧電素子などを用いたものづくり

5年
てこの働き→簡易なてんびん
物の動きの規則性→メトロノーム、ボーリングゲーム

6年
電磁石→モーター、クレーン




2点目は、児童が選択して調べるよう項目があることです。
5年生 A生物とその環境
ア 魚には雌雄があり,生まれた卵は日がたつにつれて中の様子が変化してかえること。
イ 人は,母体内で成長して生まれること。

5年生 B物質とエネルギー
ア 糸につるしたおもりが1往復する時間は,おもりの重さなどによっては変わらないが,糸の長さによって変わること。
イ おもりが他の物を動かす働きは,おもりの重さや動く速さによって変わること。

6年生 C地球と宇宙
ウ 土地は,火山の噴火によって変化すること。
エ 土地は,地震によって変化すること。



中学校学習指導要領 第2章 第4節 理科
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内容です。だいぶ抜かれました。また、電流などのところで定量的に扱えなかったのは痛かったです。

〔第1分野〕
(1) 身近な物理現象
(2) 身の回りの物質
(3) 電流とその利用
(4) 化学変化と原子,分子
(5) 運動の規則性
(6) 物質と化学反応の利用
(7) 科学技術と人間

〔第2分野〕
(1) 植物の生活と種類
(2) 大地の変化
(3) 動物の生活と種類
(4) 天気とその変化
(5) 生物の細胞と生殖
(6) 地球と宇宙
(7) 自然と人間



第1分野・第2分野とも内容の(1)から(7)については,この順序で取り扱わなくてはいけません。特に第1分野は各学年で物理→化学の順番に学習しなければなりません。他の時期の指導要領による教科書ではとっつきやすさなどもあり化学→物理の順に掲載されているのですが、それが許されず、地味にきつかったです。

第1分野・第2分野の第7単元の一部は、生徒や学校,地域の実態に応じていずれかを選択します。

〔第1分野〕(7) 科学技術と人間 イ科学技術と人間
(ア) 科学技術の進歩による成果として新素材などの利用が行われ,日常生活が豊かで便利になったことを知るとともに,環境との調和を図りながら科学技術を発展させていく必要があることを認識すること。

〔第2分野〕(7) 自然と人間 イ 自然と人間
(ア) 自然がもたらす恩恵や災害について調べ,これらを多面的,総合的にとらえて,自然と人間のかかわり方について考察すること。




ところで、地学的領域は、平成元年度改訂の学習指導要領上では1年が「地球と太陽系」、3年が「大地の変化と地球」でした。
ところが天体のような空間概念を要する単元は中1では難しい、中3にすべきだという意見がどこかの会議で出て、それに呼応したのか、平成12(2000)年度より1年生で「大地の変化と地球」をやるようになりました。ところが、その時の教科書は2分野が上下2冊に分かれており、「大地の変化と地球」単元の載っている下巻は2年生になって配られるものなので、平成12年・13年度の1年生には2分野については上下巻とも配布されたそうです。

年度ごとの各学年の地学単元の様子を表にしました。すると平成12、13年は、日本中の中学校で「地球と太陽系」の授業をどの学年もやっていなかった、ということがわかります。これって結構壮絶なことではないかと。
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あ、でも日本中の中学校でイオンの授業を全くやっていなかったことに比べれば大したことないか。


高等学校学習指導要領 第2章 第5節 理科

科目の編成
「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」(各2単位)
「物理Ⅰ」「化学Ⅰ」「生物Ⅰ」「地学Ⅰ」(各3単位)
「物理Ⅱ」「化学Ⅱ」「生物Ⅱ」「地学Ⅱ」(各3単位)
*理科総合Aは物理・化学系、Bは生物・地学系
*「Ⅱを付した科目」の内容の一部に課題研究がある。
*「理科基礎」,「理科総合A」,「理科総合B」,「物理Ⅰ」,「化学Ⅰ」,「生物Ⅰ」及び「地学Ⅰ」のうちから2科目必修。
ただし、「理科基礎」,「理科総合A」及び「理科総合B」のうちから1科目以上を含まないといけない。

中学校からの移行内容の統合
「理科総合A」「物理Ⅰ」:仕事と仕事率、電力量、水の加熱と熱量
「理科総合A」「化学Ⅰ」:電気分解とイオン
「理科総合B」「生物Ⅰ」:遺伝の規則性
「理科総合B」「地学Ⅰ」:地球上の生物の生存要因、地球の表面の様子、惑星の表面の様子、大地の変化の一部、日本の天気の特徴
「物理Ⅰ」 :比熱、水圧、浮力、力とばねの伸び、質量と重さの違い、力の合成と分解、直流と交流、真空放電
「化学Ⅰ」 :中和反応の量的関係、電池
「地学Ⅰ」 :月の表面の様子、外惑星の視運動
「理科総合B」「生物Ⅱ」:生物の進化、花の咲かない植物、無脊椎動物
(注)この中の多くは、平成20年度の学習指導要領で中学に戻っています。

科目の中で学習内容を選択する部分は、高校でもあります。
「Ⅱを付した科目」では、生徒の興味・関心等に応じて、以下の項目について選択して学習します。
物理Ⅱ 「物質と原子」と「原子と原子核」から一つ選択。
化学Ⅱ 「生活と物質」と「生命と物質」から一つ選択。
生物Ⅱ 「生物の分類と進化」と「生物の集団」から一つ選択。
地学Ⅱ 「地球の探究」、「地球表層の探究」及び「宇宙の探究」から二つ選択。




この時代の教科書 2014年版教育出版「中学校理科」
当時は教育出版の教科書にお世話になっていました。実は教育出版の14年本の指導書を書いていた過去があります。
なぜか、手元には2分野下がありませんでした。ちなみに背の色は紫でした。
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2分野上が2冊あったので2分野下の代わりにして、4冊重ねて、現行(24年本)の教育出版の教科書と厚さを比べてみました。3年間分の理科の教科書の厚みがこれだけ違います。14年本が左、24年本が右です。
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平成元年度改訂の学習指導要領の教科書である平成10年本(左)と14年本を、同様に比べてみました。
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かように学習内容が3割削減された平成10年改訂版学習指導要領では教科書は薄い本になってしまいました。

ざわ…ざわ…   

平成15年の一部改訂に続く。



Check It Out!

新学習指導要領の概要
 「新」学習指導要領といっても、平成11年版高校の学習指導要領です
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