【理科教育法】学習指導要領の変遷 (6) 平成元年改訂

大きく方向転換したはずの昭和52年版学習指導要領でしたが、結果としてパッとしないものだったようです。
ちょうどこの昭和52年に大学入試では共通一次試験が導入され、偏差値ベースのお受験が高校入試、中学入試にも重要度を増し、受験戦争は激化します。
 ※この時代の桃屋「ごはんですよ」のCMに「受験生 夜食の時間も 共通一次(1時)」というのがありました。。。

「ゆとり」の時間も、学校の裁量ということで「何してもいいよ」という時間でしたが、そう言われるとどうしたらいいのかわからないのが現場ってものです。あげくに遅れている授業の補習をする時間として使う学校もあったりして、「ゆとり」の時間なのにゆとれない(泣)というか、とりあえず企画した人の趣旨からはたぶん大きく外れているんじゃないかという使われ方もされていました。

そして懸案の「落ちこぼれ」や校内暴力の問題は昭和52年版が施行された後も相変わらず…というか、校内暴力は昭和50年代にわたってピークでした。

一方、ヤスこと中曽根康弘首相は臨時教育審議会を発足、 その答申で、個性重視の原則や教育の自由化などを提言しました。

そして、昭和62(1987)年の教育課程審議会の答申において「自ら学ぶ意欲と社会の変化に対応できる能力の育成、個性を生かす教育の充実」が打ち出されます。

さて、学習指導要領の歴史上、初めて小中高そろって出された平成初の学習指導要領は、一体どのように改訂されたのでしょうか-



小学校 学習指導要領 平成元年3月
中学校 学習指導要領  平成元年3月
高等学校 学習指導要領 平成元年3月

「新しい学力観」
 従来の学力観…知識と技能をを子どもに身に つけさせる
 新学力観…子どもが自ら考え主体的に判断し,表現したり行動でき る資質や能力の育成
  →意欲・関心・態度などもみる観点別評価 や個人の到達度を評価する「絶対評価」を導入

基礎的・基本的な内容の指導の徹底
小学校の1・2年では「生活科」爆誕→理科・社会科は廃止
中学校「技術・家庭科」に「情報基礎」が登場
高校で「家庭科」を男女必修。
高校社会科は「地歴科」と「公民科」に分割し、「世界史」を必修に。
 ※高校社会の解体に抗議して文部省を辞めた社会科の教科調査官(当時)がいたらしい(社会科の先生談)。
授業の1単位時間の弾力的な運用が可能に

国旗掲揚・国歌斉唱

[昭和52年] 第4章 特別活動
国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合には,生徒に対してこれらの祝日などの意義を理解させるとともに,国旗を掲揚し,国歌を斉唱(せいしょう)させることが望ましい。 
[平成元年] 第4章 特別活動
入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする

シチュエーションは昭和版は「国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合」だったのですが、祝日は普通にお休みでしたから、現実的にはほとんどないことですよね。入学式や卒業式は毎年ありますが。それと「望ましい」から「指導するものとする」と一応mustになった点に注目。軍靴(あえて「ぐんくつ」と読む)の音が!

中学校2・3年での選択教科の拡大

第1章総則 第4 選択教科の履修の取扱い
 選択教科の履修については、次のとおり取り扱うものとする。
(1) 生徒に履修させる選択教科の数は、第1学年及び第2学年においては1以上、第3学年においては2以上とし、生徒の特性等を十分考慮して、それぞれの生徒に適した選択教科を履修させること。
(2) 各学年における選択教科の種類は、第1学年においては外国語又は第2章第10節に示すその他特に必要な教科、第2学年においては音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語又は第2章第10節に示すその他特に必要な教科、第3学年においては第2章に示す各教科とし、これらのうちから履修させること。
(3) 略

選択教科の思い出
*この時代に、教員となって、東京都のある区の中学校に赴任したのですが、その学校では区内の中学校で唯一、2年生の外国語以外の選択教科をやっていませんでした。校長先生が区教委からの指導に対し、「そんなもんより音楽と美術を2時間ずつやった方がいい」と突っぱねてましたw。指導要領上では全然オッケーだったのね。

*ある年の選択理科で原子力発電の賛否をディベートさせて、それを文化祭で公開したら(文化祭の時は事前に作った台本どおりにやった)、レベル高ぇーと好評だったのですが、次の年の選択理科の希望者が「あんな難しいことやるのか…」とゼロで、開講できませんでした。




中学校 学習指導要領  第2章 第4節 理科

この教科書は、大学院に行きながら私立校の非常勤講師をしてた時のもの。
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この教科書は、現任校に着任した当時使っていたもの。
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指導書。
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中学校理科の単元構成は…

〔第1分野〕
(1) 身の回りの物質とその変化
(2) 身の回りの物理現象
(3) 化学変化と原子、分子
(4) 電 流
(5) 化学変化とイオン
(6) 運動とエネルギー

〔第2分野〕
(1) 植物の生活と種類
(2) 地球と太陽系
(3) 動物の生活と種類
(4) 天気とその変化
(5) 生物のつながり
(6) 大地の変化と地球



個人的には昭和52年版の単元に比べてすっきり分けられた感じがします。特に化学と生物の1・2年が。化学は1年で物質の性質という点に着目するにとどめ、2年生で物質が変わる化学変化となっていますし、生物に至っては、1年植物、2年動物とわかりやすい。
また1年の物理で、「力」から光や音が入った点も注目です。
それと3年で、第1分野は「科学技術の進歩と人間生活」としてコンピュータの素子の発展の過程などが、第2分野では「地球と人間」として自然環境を保全することの重要性など、第7単元としては独立してないものの、第7単元の片鱗が見てとれます。

それから「ゆとり」を進めるということで内容も削減の方向でした。例えば、イオンは1価のものしか扱わなくなりました。だから硫酸と水酸化バリウム水溶液の中和なんかは姿を消しました。なので化学反応式を書ける中和は、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液のパターンだけで、この時できる塩(えん)は、塩化ナトリウム、つまり食塩です。そうすると塩(えん)の例が食塩しか挙げられないので、塩(えん)=食塩、つまり塩(しお)と解釈してしまうのが、生徒の誤解あるあるなのです。硫酸バリウムのような別の塩の例があるとこういう誤解は生じにくいのですが。

3年では選択理科が入るようになりました。



高等学校 学習指導要領  第2章 第5節 理科

「総合理科」(4単位)
「物理ⅠA」(2単位) 「物理ⅠB」(4単位) 「物理Ⅱ」(2単位)
「化学ⅠA」(2単位) 「化学ⅠB」(4単位) 「化学Ⅱ」(2単位)
「生物ⅠA」(2単位) 「生物ⅠB」(4単位) 「生物Ⅱ」(2単位)
「地学ⅠA」(2単位) 「地学ⅠB」(4単位) 「地学Ⅱ」(2単位)

「総合理科」
「物理ⅠA」又は「物理ⅠB」
「化学ⅠA」又は「化学ⅠB」
「生物ⅠA」又は「生物ⅠB」
「地学ⅠA」又は「地学ⅠB」
の5区分から2区分にわたって2科目選択必修です。
日常生活と関係の深い「ⅠA」、基本的な概念や原理・法則を理解する「ⅠB」、課題研究なども行う 「Ⅱ」という性格の違いがあります。



学校5日制
平成4年9月から月1回第2土曜日がお休みになりました。
さらに平成7年4月からは第2・第4土曜日がお休みになりました。
平成14年度から完全学校週5日制を実施しています。

平成13年度までは、土曜に授業がある人ない日があるわけです。このままだと土曜日に当たった授業の回数が他の曜日より明らかに少なくなりますから、時間割を組み立てる上で何らかの工夫が迫られることになります。
「土曜日は授業ある日に3時間やるけど、通年で2時間の扱いとする」とか、「土曜日は教科の授業を入れないで特別活動などしかやらない(ノーカバンデー)とか、「月火水木金土月火水木金の11日サイクルの時間割をつくる」だとか「毎月時間割を変える」だとか、「土曜の授業をほかの曜日の授業と抱き合わせる」だとか、涙ぐましい努力をしていました。その頃は教務で時間割を担当することが多かったので(というか公立時代はずっとでした)、しょっちゅう頭を悩ませていました。


業者テスト追放!
平成4(1992)年10月には埼玉県教育長であった竹内克好氏が、業者テストを追放したのに端を発し、翌平成5年(1993年)、文部省(鳩山邦夫文部大臣)から、全国に同趣旨の通達を出しました。
公的な学校が、神聖な「お授業」の時間を使って、特定の民間業者のテストをするのは何事だ!という考えも、そこだけ見ればもっともなのですが、この結果、中学校では客観的な生徒の成績データが取れず、高校の合格可能性を見据えた進路指導が難しくなります。その結果、中学校では校外の会場模擬試験(たとえば東京ならVもぎとかW合格もぎとか、埼玉なら追放されたはずの北辰テストの一択)を受験するように指導せざるをえなくなっていったりして、かえって面倒な事態に相成りました…。意味無ぇ。
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